塗装職人のお話
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大手の会社に勤めていた時代、こんな会話を耳にしたことがある。

「どうして塗り替えるの?」

二階のベランダから、向かいの家の玄関先の奥さんへと話しかける、これから訪問する家のお客さんの姿。
ペンキ?塗料?水性?溶剤?
「カビが気になって、塗り替えをしようとしてきたときに、セールスの人が来たの。
目地にヒビが入って釘も浮いて出ているし、艶もなくなってきているとか…私には分からなかったけど、プロが見てやったほうがいいと言ったから。
今やっておけば当分やらなくていいでしょ?」

へえ、と思うと同時に、ちょっとした違和感。

「あとは、息子の代に任せればいいから」

当時の私にはとても印象的だったから、深く覚えていた。
お客さんがいう「塗装のプロ」。
これは、実はまだ塗装業界に入って十日も経っていない新人営業マンの事を指す。
会社で用意しているマニュアルを読み、ほんの数回現場周りをしただけ。もちろん、自分は塗料にもローラーにも触れず、ただ現場を回っているだけなので、知識がつくはずもない。
塗装業を生業としている人間からすれば、それは全く「素人」と同じようなものだった。
別にこの営業マンを馬鹿にしていたわけではない。
私にも営業経験はあるし、本人はただただ一生懸命仕事をしているというのは分かる。
だけど、訪問販売業界の営業というのは”契約をとって幾ら”という”歩合制”がほとんどだから、契約が取れなかったら辞めるしかない。そうして、また新人が入ってきて、マニュアルとすこしの現場研修で、街に繰り出していく。
その繰り返しなものだから、「この間いた営業マンがもういない」ってことはよくある話だったりする。
中には長く勤めている営業もいるけれど、それでもつきつめた工事や、実際現場はどう動いているのか?そういう事は、知らない事が多い。
ペンキ?塗料?水性?溶剤?
工事に不満があって、いざ電話をしてみてずうっと「外出中です」……
そんなことがあったら、やっぱり嫌だろう。

もうひとつ、知らない事がある。営業は、自分がとった契約金額から、必要以上に大幅に削られた金額で下請けが工事をしているのを知らない。だから、契約額が全て塗装に生かされると思う。
それだけ疑問がないのだから、堂々と、胸を張って自信満々に説明をするのも頷ける。
塗装をしようと考えている人は、多分、飛び込み訪問になんか引っかからない。だって自分で業者も調べて連絡をしているから、見知らぬ人間は断るだろうし、ある程度は調べているから相手の知識にばかり引っ張られないと思う。それでも自分が持っている知識と合致してしまったら、信頼があると思い込んでしまうだろうけれど。
危ないのは、どちらかと言えば”何も考えていなかった”人の方。
まんまと騙されてしまう(相手がだますつもりがなくても)。
多くの人は、自分の家を塗ってもらうのに、塗り方・塗料に関してほとんど知らないだろうし、知らないのが当然だと思う。
だって学校で学ぶものでもないし、ビジネスマナーっていうわけでもないからだ。
しかも10年に一度とかそれくらいのスパンでしかやらないものだから、築年数のある家だったとしても、前に塗装した時は記憶に残るほどの年齢じゃなかったりもする。
本当は自分よりもほんの少しくらいしか…そう、小学生の英語が中学生になりました、程度だろうに、話を聞いてたら相手は大学生の英語レベルでも持ってるんじゃないかって勘違いしてしまうのだ。
良くある営業トークは、「近くで工事をしているから、足場代が無料になります」これだ。
昔からあるのに、みんな騙されてしまうのは、足場が大掛かりなものだと分かっているからだろう。
大体、これに関しても最低15万円はかかる。その分が無料になるだなんて、惹かれてしまうのも無理はない。
でも、よく考えたら、足場を解体するのも組むのも労力があるわけで、さらっと無料に出来ます!だなんておかしい。
ペンキ?塗料?水性?溶剤?
重い足場は車で運ぶし、足場屋は組むのが仕事だから、その分が無料になんて出来るわけがない。
たとえばスポーツジムに行って「初回一ヶ月は器具無料(ただし半年契約してくれるお客様のみ)」
「ジム内ラウンジの食事券」っていうサービスとは、規模が違う。
だけど、スーツをピッチリと着て、笑顔でハキハキと元気が良くて、人あたりの良さそうな営業マンが
「近くに会社が出来たんです」
「塗り替えのモデルを探していて」
「少し向こうで工事をしているので」
なんて言ってきたら、
「あらそうなの?」
って不思議と受け入れてしまうのだ。
だけど、この手法を用いる業者は、良い工事をするとは考えにくい。
足場の分、どこかに影響が出ていると思うのだけど、塗装においてそれが適応されるのは職人に対してだ。
いま多分「なんだ」と思ったと思うけれど、塗装施工で職人に対して減額が適応されるというのは、その分塗装の質を落とす、っていうのと同義だと考えて良い。
実は塗装なんて、素人が塗っても分からない。
綺麗に塗れてしまえばだれでも出来るのだけど、塗料の希釈量だとか、使用するローラーや、養生の技術、場所、体力、そして何より経験がものを言う世界なのだ。
いくら一級塗装技能士で、長年の経験があったとしても、金額が削られてしまえばその技量を発揮出来なくなってしまう。

もし、より失敗しない業者を選ぶのであれば、契約の前に無料で見積りを出してもらうに限る。そこで、使用する塗料のカタログを借りておき、その裏に書いてある塗装仕様を見るといいだろう。「一u(一平米)当たり何キログラムの塗料を塗る」という塗付量が明記してある。
それを元に、家の壁uに、明記してある1uあたりの塗布量をかければ、使用する塗料の量が割り出せる。もしやるのであれば、家を建てたときの図面か、実際に家を図ると良い。
そうそう、家によってuは違うので(だって同じ形の家は、ない)例え同じ面積であっても参考にしない方がいい。出来ればちゃんと図ると良いけれど、大体の数値を把握しておくという気持ちであれば、問題はないかもしれない。
簡単に家のuを調べる方法としては、一階の外周を図り、壁の高さをかける。二階も同じ方法で計算をして、合計すればいい。
大まかな計算なので絶対に正しい数値とは言えないが、参考にはなると思う。

たとえば、あなたの家の建て坪が30坪で、窓をのぞいた壁面積が約120uだったと仮定しよう。塗装仕様に明記してある塗布量が、1uの面積に、使う塗料が0.4キロだとしたらば

塗料0.4kg×外壁面積120u

となる。
そうすると出てくる外壁に使用する塗料は

0.4×120=48

つまり、48kgの塗料を使用するということだ。
ちなみにこの数字は上塗りだけの計算。塗布量というものは、それぞれ「下塗り」「中塗り」「上塗り」の塗布量が明記してあるので、見てみると良い。
塗料はほとんど一斗缶につき15kg色なので、48kgの使用だと、約4缶となる。
注意してほしいのは、外壁や使用するローラーで塗料の消費量が違うという点だ。
外壁が塗料の吸い込みが激しいモルタルリシン外壁であればもっとかかるし、フラットなサイディング外壁だったら、4缶より少なくなるかもしれない。
砂骨ローラーで塗布する場合は0.9kgに増えるし、逆にウールローラーを使用するなら0.4kgで十分だ。
良使用する塗料を計算してもらったけれど、実際に使用する塗料も計算通りとはいかない。
しかし、少なくなると塗膜が薄くなる恐れがあり、無理に仕上げられたとしても判別不可能なので、注意するのは自分が計算した缶数よりも少ない場合だ。ここについて突っ込めば、優良な業者ならその理由を納得行くまで話してくれると思う。
希釈率である水の量やシンナーの量もしっかりと明記されているが、実際現場ではその場の天気や、家の譲許などで多少変動させるので(それでも水っぽい塗料にしたりはしない。あくまで最低限、現場に合わせるという意味で)、現場でしっかりと横について測るわけにもいかない。
だけど、こうして自分で計算したものを見せれるということは、少なくとも訪問業者を威嚇出来るかもしれない。
ペンキ?塗料?水性?溶剤?
計算したものを出すのが難しければ、もうひとつ手がある。

「塗布量から計算して、何缶くらい必要になるの?」

こう言ってしまうと、嫌な感じに聴こえないし、計算すればだれでも分かる事だから、業者も嘘は言えない。
実は、この一言を言うだけでも雲泥の差がある。
外壁の種類によって変わるのであれば、説明もしてもらったらいいだろう。
そして、言わせてしまうのd。人は言ったことは翻しづらい。
この時、一緒に書いてある下地調整についても質問してみると、さらに良いかもしれない。
分からない事をなんでも訊くのは悪いことでも恥ずかしいことでもない。
だって、あなたは全くの素人なのだから、分からないならなんでも訊いて良いのだ。
訊くことは、塗装にも自分の家にも関心があるという事が業者に示せるので、業者の姿勢を正せるかもしれない。
だって普通、これほど真剣に何でも訊いてくるお客はいない。
みんな業者の言うことは絶対だと信じ込んで、言いなりなのだ。
熱心に訊いてくる人に対して、適当なことをしようとする人はいない。
工事は、あなたと業者の良好な関係によって工事が完成する。
ペンキ?塗料?水性?溶剤?
だけど、お客さんが直接話す機会がない場合は、ちょっとだけ注意してほしい。
自分と監督・自分と営業マンとの良好な関係は、工事をする上では”良好な関係”とは言いづらいからだ。
たとえば外壁の色なんかどうだろう。ここはちょっとと直接職人に言えればよいのだが、これが監督や営業を通すと、自分が言った通りの事がそのまま伝わりづらくなる。
伝言ゲームになるからだ。
塗らなくて良いところを塗ってしまったり、塗ってほしいところが塗られていなかったり、色の違いなんかは特に、業者に言っても通じないときだってある。
職人は外で体を使って作業するものだから、ガタイも良いし、無愛想だし……と物怖じしてしまうかもしれないが、どうか直接話す機会があるのえあれば、直接話してほしい。
そうすれば、案外と良い人たちの集まりで、信頼して話しかけてくれるお客にたいして職人も作業と態度で答える。
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一級塗装技能士は国家資格 運営許可証
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